| 伊藤秀雄からのメッセージ |
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最近、交通の便が非常に良くなりました。新幹線、高速道路、そして飛行機。東京で会議がたまにあり、北海道から沖縄まで全国の仲間が集まります。距離的に、新幹線で2時間半の宮城は近い分です。ところが、よく考えてみると全国どこからでも2,3時間で東京に着いてしまいます。大分の友人が午後の会議に、朝畑の仕事をしてきたと言います。確実に時代は「ファースト」に進んでいました。反面、世の中必ず逆も反映します。それが「スロー」。時間や労力の無駄を省くことを良しとしてきたこれまでの日本の風習を、見直そうとする動きです。
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| 東北新幹線の一戸トンネル開通記念の話が思い出されます。新幹線ならわずか6分で通過する距離28キロメートルのトンネルを、7時間もかけて歩こうという企画でしたが、時間の短縮のためにつくられたトンネルを時間をかけて歩いてもらおうとは、なかなか「にくい」企画ではありませんか。その上、完歩した人には、7時間もかけて歩いたのに「あなたは新幹線よりも早く歩いた人」という証明書を発行したとのこと。これまたお見事、読んでいてあまりに素晴らしい企画だな、と思いました。 |
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10年くらい前になるでしょうか、東京に住む友人が初めて伊豆沼に遊びに来ました。普段忙しい友人のため、のんびりとした雰囲気をと歩きながら案内することにし、「ここはラムサール条約の指定地で自然の楽園。冬は渡り鳥、夏は蓮の花、自慢でねぇけど良いどごだべぇ」と教えたのです。
ところが彼は、私にこういいました。「そんなことは誰でも知ってるよ」「それより、こっちの山かっこいいね。木もすごいね。樹齢何百年かな」などなど、見るもの聞くものが驚きの連続らしいのです。
質問に答えられないことが多くなり、どうしようかと思っていたところに、近所のお年寄りがいとも簡単に答えを出してくれました。私も段々周りの景色を注意深く見るようになっていき、いつも見ている風景にこんな価値があったのかと驚きました。「慣れ」がベールを厚くし、そのベールを取ってくれたのは、初めて伊豆沼を訪れた友人であり、ゆっくり流れた時間、そして歩くスピードだったのかな、と気づいたのです。一戸の暗いトンネルの中にもきっと7時間分の気づきがあったことでしょう。 |
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| 今、時代はファーストからスローへと完璧に向かっています。食べものではファーストフードからスローフード、暮らしでは都会の雑踏より田舎の自然、まっすぐな舗装道路より曲った坂道、無制限より限定、便利すぎるより少し不便な方が、何となく世の中のありがたみに気づくことが多いでしょう。 |
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| もっとゆっくり地元を歩いてみれば、見過ごしがちなすばらしい「自然」や故老の「人財」が、そこにもあそこにも一杯発見できるはずです。 |
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- 通信誌 2005年・夏号より -
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